発行から5年経つ本書だが、未だに書店でもオススメされているのを見かける事がある。
どんな本?
あたりさわりのない無意味な雑談ではなく、「意味のある雑談をすれば、仕事や人間関係が変わる」。そんなメッセージのもと、雑談力を高める方法を具体的、実践的に解説したのが本書です。
たとえば、「声は、ドレミファソラシドの『ファ』か『ソ』」「『なるほどですね』『そうですね』は話を聞いていない人の反応」「『なぜですか?』は愚問」など、全38項目でそのテクニックを紹介していきます。さらに、日常で雑談力を鍛えるためのトレーニング方法も収録しており、初心者からある程度話し方に自信がある人まで、すぐに実践できるノウハウが詰まった一冊です。(amazonの商品紹介ページより)
と紹介されているが、実質的には営業職向けのノウハウが書かれた本である。(どちらかというとルート営業)
この本を読んだきっかけ
私は人見知りが激しく、慣れた相手以外との会話をあまり楽しめないタイプだ。気の利いた話題も振れないし、咄嗟に何も思い浮かばずに見当違いの返答をしたり、逆に変に1人でペラペラ突っ走ってしまう事もある。要するにコミュ障だ。
そんな私が縋るような思いで購入したのが本書だった。奥付を見る限り発行されて割とすぐの時期に購入したようだ。その後1回読んでそれっきりになっていて、何が書いてあったかまったく覚えていなかったので今回読み返してみた。と言っても読み返してから2ヶ月程経っているため、またあやふやかもしれない。
そんな状態で総評をするのも失礼かもしれないが、何度読んでもおそらく評価は変わらないのでそのまま進める。
総評
とても辛口な数値になってしまった。文章の平易さによる読みやすさだけは確かだ。
これを読んだだけでは超一流の雑談力は身につかない
内容は初歩の初歩の入門書に留まっている。これから社会人になる人が、心の準備をするためにさらっと一読すればいいかな、くらいの内容である。ただし、ある程度歳のいった人と関わる機会がある人のみが読めば良い。(詳しくは後述)
この手の書籍などを他にも読んだことがある人なら皆思うことだろうが、内容は割と基本的、というかありきたりというかで、超一流らしいテクニックは見つけることができなかった。
本書を読んだことで劇的に話術が向上したり、人生が変わった人がもし居たら、どのように本書を活かしたかご教示頂きたい。
営業に雑談は必要か?
身も蓋もないタイトルを付けてしまった。
仕事や日常生活など色々な場面での雑談力が鍛えられる事を期待して読んだのだが、実際の内容は営業職向きであり、さらに私は営業をされる側の立場にいる為、本書のターゲットから外れているのにいちゃもんをつけるようで気が引けるが、営業される側としての意見を記しておきたいと思う。
これはあくまで私の判断基準なので、全く違うタイプの人も多々いるだろうが、私の意見としては営業職に必要なのは顧客のニーズに合った適切な商品を、メリットデメリットを踏まえてきちんと手短に説明できること。これに尽きると思っている。
いくら雑談が盛り上がって仲良くなろうとも、持ってくる商品の条件が自社に合わなければ買うことはない。逆に雑談力のお陰だけで商品が売れるのだとしたらお情けで買ってもらってるだけのような気がするが、ノルマが厳しい営業職ならばそれもアリなのだろうか。特にBtoCならお情けも重要というかそれがメインかもしれないが本書はBtoB営業を想定しているように見える。
また、1日の限られた時間の中で商談が長引くと他の業務に支障が出る。いくら話の面白い人でも、忙しい時に来られると迷惑でしかない。
一応「世の中には雑談すべきでない人もいる」と触れているがさらっと流されているので、そこも掘り下げて欲しかった。
電話のノウハウは真似しないで欲しい
本書の中で最も実践して欲しくないのは、「30秒程度で切り上げる電話を不意打ちでかけてみよう」という項目である。電話はメール等と違い不意打ちな分、より相手の素に迫りやすいツールである、とされている。
例として挙げられているのが以下のような会話である
「○○さん、どうもお世話になっております、いや、最近どうされているかなと思いまして、つい気になって電話してしまいました(笑)」
「出張で熊本に来たんですが、○○さんのご郷里なので思わず連絡を差し上げてしまいました(笑)」
メンヘラ彼女か何かか?(笑)と書いているが電話口の相手は笑えているだろうか。
電話というのは相手の業務の手を確実に止める行為であり、緊急や、メールで文章にするより口頭で伝えた方がスムーズな用件、もしくは話し合いが必要な用件に限って欲しい。バタバタしている時にこんな電話が掛かってきたら着拒にするかもしれない。
本書のテクニックが効く相手
ただ、半分隠居しているような会長職のような人にはこの手の電話が効くかもしれない。本書のテクニック全般に言える事だが、少し古いのである。著者が営業職に就いていたのが1990年より前のようなので仕方がないのかもしれない。
50~60代以上を相手にする営業職なら使えるテクニックもあるかもしれない。若い世代になると仕事に対する認識も変わっており、仕事も人間関係も効率に重点が置かれているのではないだろうか。
「○○さんのファンになっていいですか?」でハートを打ち抜く
という項もだいぶアレだが、刺さる人にはクリティカルヒットかもしれない。
競合数社とコンペをするような業種だと、雑談力というか営業との関係性が物を言うかもしれない。ただ、あまりに他社より劣っていたら選んでもらうのは難しいだろうし、最後に物を言うのは商品力だと私は思う。
本書を読んで得た気づき
ここまで言いたい放題書いたが、まったく学びや気付きが無かったわけではない。
人をつかむのは、「雑学」ではなく「使える知識」
私は割と雑学知識が豊富な方であるため、つい雑学をペラペラしゃべってしまう事があるので肝に命じたい
「人見知りだから」と壁を作るのではなく、「人見知りだからこそ」解消するためのアクションに打って出る
これも戒めだ。とにかく人と関わる場面を避けようとするが、それでいつまで経っても進歩するわけがないのだ。
一応多少の気づきも得たが、もう読み返すことはないだろう。
実践編もある
本書の実践編も存在する。もしかしたらもっと色々なテクニックが深堀りされているのかもしれない。kindle unlimitedの対象だったので、会員の方は読んでみるとまた違った感想を抱くかもしれない。